ビンテージマスタングのデザインは現代のスーパーカーをも超える
Vintage Mustang is cool than Super Car.
文/石山 英次写真/古閑 章郎
BCDによる久々のビンテージ個体である。BCDは、厳選された直輸入車両や一度販売された直輸入車両をベースにした認定中古車を扱っているが、同時にビンテージと呼ばれる、まるで骨董品のようなヒストリックカーも扱っている。
ヒストリックカーとはいえ、現代の最新直輸入車両と同様コンディション優良の個体を販売するのがポリシー。またブランドやメジャーモデルを優先することなく、その歴史を感じさせる、デザインの原形をとどめた(ビンテージ品と呼ぶのに相応しいであろう)個体のみを取り扱っている。
過去には、コルベットやマスタング、チャージャー、そしてポンティアック、マーキュリーといった数々の名車たちを取材してきたが、ここ数年はほとんど紹介することができなかった。
というのもこうしたビンテージ車両は、BCDの目利き担当による直接仕入れがなされており、現地にて車両のコンディションを直接チェックしたものを輸入しているから。ここ数年のコロナ禍や円安為替によりそうした仕入れができない状態が続いていたのである。
だが、現地に赴くことが可能になり、ついに待望の仕入れが可能になった。その第一弾が65年型マスタング GTである(その他も続々入荷)。
ちなみに1965年型マスタングは初代モデルであり、言わずと知れた旧車の王道モデルである。中でもファストバックは世界中のコレクター垂涎のモデルでありその価値は計り知れない。
一説によると「ボロボロの状態でも1,000万円はいく」らしく、ピカピカのコンクールコンディションであれば数千万はくだらないという。
だがBCDは、あえての2ドアハードトップをチョイスする。その方が確実性の高い仕入れが可能だからである。
くわえて2ドアハードトップにも旧マスタングならではの美しさがあり、それを日本のユーザーに伝えたいという思いがあるからである。
ということで取材車両はシャンパンベージュのボディが美しい1965年型マスタング、2ドアハードトップ。搭載されるエンジンは289キュービックインチV8=4700ccのV8エンジンであり、4速MTとの組み合わせになる。
この年代、つまり初代マスタングは1964年の途中で発表されたこともあってデビューイヤーは64・1/2(ロクヨンハーフ)と表記され、65年型では年間約55万9000台、66年型では約60万7000台という驚くべき生産台数をマークした大ヒットモデル。
ボディスタイルはオーソドックスなノッチバックタイプの2ドアハードトップとコンバーチブルでスタートし、65年型からは流麗なルーフラインを誇るファストバックが追加され、その基本的なデザインは66年型までそのまま継承されている。
ちなみに67年からボディデザイン(初代後期型へ)が変更されているから、初代前期型は66年までとなる。
そういった詳細を頭に入れ、取材車両の65年型を見るが、その前に66年型との違いはどこか?
基本的には大きな変化はないが、見分けがつくポイントはフロントグリルである。グリルの形状が異なっており、その違いで65と66が判別できる。
で、この289のV8エンジンは、当時200hp、最大トルク282lb-ftを発生させたスモールブロックの傑作と言われたフォード謹製V8エンジンであり、現車にはその当時の面影がエンジンルームにぎっしりと残されている。
それを動かすミッションにも感動。なんと4速マニュアルギアボックス。クラッチは奥深くまで踏み込むタイプで、シフトノブもフィールも長い往年のタイプ。それでも普通に動かすことが可能なほど機関がしっかりしているからマスタングのマニュアル車を狙っていた方には朗報だろう。
また、ボディはペイントを含め想像以上にクリーンな状態であり、メッキパーツも輝き、インテリアの各部にも当時の面影とビンテージさながらの雰囲気がギッシリ詰まっている。
聞けば「現地でしっかり手が施されていた個体です」ということで、使い込まれヤレた個体とは全く異なる雰囲気を漂わせていたのである。
ドア下がりすら感じさせない状態の良さ(ドアもカチッとしっかり閉まり、ウインドーも楽に上下する)、いまだに当時の雰囲気を色濃く残すデザイン、そしてすぐにでも走り出せるメカニズムコンディションetc
というか、まるで新車か、とでも言いたくなるような状態である。くわえてインテリアが素晴らしい。後付けパーツに違和感がなく、往年のデザインと雰囲気や質感が如実に味わえるグッドコンディション。これぞ旧時代のマスタング。
だから、この個体を見ちゃうと他が見れなくなる恐れあり! それほどの状態である。
個人的に思うが、スピードに対する興味がなくなると旧車への興味が俄然湧く。デザインの美しさやキャブレターサウンドが奏でる独特の世界観の虜になってしまい、当然、現代車では物足りなくなってしまう。
いつの日か海沿いの国道をオールドマスタングでのんびり流したい、と思うのであれば、こういったビンテージ風情を感じさせる個体をチョイスし、十分に走れる仕様を目指すべきではないかと思う。
というか、このビンテージマスタングであればそれこそ購入した日からそうしたドライブが十分に可能だろう。
さらに贅沢を言えば、この66年型マスタングの傍に現代のマスタングGTが並べられれば超最高ではないか!
65年型となれば最新のマスタングほどの速さや快適性は全くない。が、所有する人々を楽しませる要素をたくさん持っているという点において、さすがは「マスタング」と言えるのである。
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