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BUBUがお届けする連載企画 “ナレッジ” | Showcase.22 ~ 深谷知広~ 「シボレー コルベット & カマロ×深谷知広」

第22回目は競輪選手&トラックレーサーの「深谷知広」さんにご登場いただきました。

BUBUがお届けする連載企画 “ナレッジ” | Showcase.22 ~ 深谷知広~ 「シボレー コルベット & カマロ×深谷知広」

文/プロスタッフ写真/内藤 敬仁

今回のナレッジに登場していただいたのは、開幕まで3年を切った東京オリンピックの自転車競技で金メダルが期待される競輪界のトップレーサー・深谷知広選手だ。

競馬、競艇、競輪など、公営競技の世界で生きる男たちにクルマ好きが多いことはよく知られているが、深谷選手のクルマ愛はある意味群を抜いていると言っても過言ではない。というのも、深谷選手は「僕は競輪選手になって高額な賞金を手にするようになったからクルマにお金をかけるようになったわけではなく、子供の頃から無類のクルマ好きで、憧れのクルマを手にするために競輪選手になったんです(笑)」と語るほど、年季の入ったカーマニアだからである。

車両イメージ愛車「フェラーリ599」と深谷知広選手

深谷選手が幼少期に最も憧れたクルマはフェラーリF40。フェラーリの創業者であるエンツォ・フェラーリが、その生涯の最後に関わった特別なモデルであり、歴代フェラーリ生産車の中でも根強い人気を誇るモデルである。しかし、F40がデビューしたのは1987年。深谷選手が産まれたのは1990年である。F40は1992年まで生産されたモデルではあるが、それにしても子供が自分よりも“年上”のモデルに憧れるとは!? この事実だけでも深谷選手がいかに幼い頃からクルマが好きだったかがよく分かる。

「小さい頃、友達がウルトラマンや仮面ライダーの人形を欲しがる中で、僕はトミカを欲しがる様な子供でした(笑)。小学生の頃からゲンロクやROSSOといったスーパーカー雑誌を熱心に見ていたほどです。クルマは僕の人生で一番最初の、そして最も長く続いている趣味なんです」という深谷選手の現在の愛車は、取材の約一ヶ月前に購入したばかりというフェラーリ599、車両本体価格以上の改造費をかけたというホンダS660、そして日常の足として使用しているボルボXC90の3台。

車両イメージ車両本体価格以上の改造費をかけたというホンダS660

3台の愛車をシチュエーションに応じて使い分けている深谷選手だが、中でも購入したばかりのフェラーリに関しては「599は中古車でしたんですが、ディーラーで偶然に目にして一目惚れして購入を即決しました。8年落ちにも関わらず、購入時の走行距離は約3500km。さらには“ビアンコフジ”という特殊なパールホワイトのボディ&レッド+ホワイトステッチのインテリアの組み合わせで、鍛造ホイールなどのオプションもフル装備していたんです。購入してから約1ヶ月で2500kmほど走りましたが、凄く気に入っています」とゾッコンの様子。

28歳にして自身のクルマ趣味の原点とも言える“フェラーリ”を手にした深谷選手だが、彼にとってフェラーリ599はまだ「上がりのクルマ」ではないという。

「これまでの僕の人生で最も高いクルマですし、599にはまだまだ乗るつもりでいますが、乗ってみたいクルマは他にもたくさんありますよ。“馬”を手にしたからには次は“牛”も手に入れたいですし(笑)。それに今回の取材でコルベットとカマロに試乗させていただくのも、またアメ車に乗りたいという思いがあるからです。本当に好きでなければ、試乗車に乗るためだけにわざわざ伊豆から自走で東京まで走って来ませんよ(笑)」とのこと。

車両イメージ深谷選手にお乗りいただいたのは、2018年型シボレーコルベットGSと2018年型シボレーカマロSS

さて、今回、深谷選手にお乗りいただいたのは、2018年型シボレーコルベットGSと2018年型シボレーカマロSS。いずれも正規輸入車で、キャデラック・シボレー葛西の試乗車なのだが、実は深谷選手は、コルベット、カマロともにかつて愛車として所有した経験がある。

「シボレーカマロは僕が最初に所有したアメ車です。僕が乗っていたのは、先代となる5代目モデルの『V8 SS RS』。生まれて初めてのV8モデルでしたから、その圧倒的なパワーに魅了されました。そのカマロの後に『モパー'11(全世界1000台限定で発売されたダッジチャージャーの特別モデル)』を少し挟んで、人生3台目のアメ車として購入したのが『C7コルベットZ51』。このC7ではツーリングやサーキット走行会などにも積極的に参加しました」とのこと。

ここでひとつ疑問が湧いてくる。それは、世代の異なるカマロはともかく、スペック的にはZ51と大きな変化のないGSにも試乗してみたいというのは、どういった理由からなのだろうか?

「僕が以前乗っていたC7はミッションが7MTだったんです(当時のATはまだ6AT)。僕は別にMTは苦にならない人間なのですが、世界的にも評価の高い現行モデルの8ATに興味があったのと、GSは単純に見た目も迫力があってカッコいいから気になってたんですよね。あと、フェラーリのV12を体験した後にまたコルベットに乗ってみて、自分がどう感じるのか?にも興味があったので」とのこと。

今回は、最初にコルベット、次にカマロという順番で試乗していただいたのだが、それぞれに乗った感想をうかがってみた。
 
「コルベットに関しては、やっぱりワイドボディがカッコいいですね。以前に僕が乗っていたZ51は、ヘネシーパフォーマンスのHPE500というコンプリートカーで、ボディに派手なデカールが貼ってあったし、足回りもローダウン&HREホイールなどに変更されていたので、ノーマルよりもかなり目立つ仕様だったんですが、GSのZ06譲りのエアロパーツはやっぱり迫力があるし、ノーマルでも十分というか、ドレスアップする必要を感じないくらいです。ただ、見た目に関しては、ショールームに展示してあった光岡自動車50周年記念モデルが好みですね。ブラックボディにイエローのアクセントが映えて独特の存在感があるというか、凄く目を引きました」

「実際に走らせた感想としては、8ATはスムーズだしパドルシフトのタイムラグもほとんどなくてイイ感じです。これならMTでなくてもいいかな?と思います。それにクリーピングのあるオートマはやっぱり楽ですね(笑)。フェラーリのF1ギアボックスは渋滞の時とか想像以上に面倒なんですよね」

「パワーに関しては、620psと466psで、599の方が遥かに上のはずなんですが、V8ならではのトルクの太さがあるせいか、体感的にはフェラーリと比べても遜色ない感じです。あと不思議なのが、僕が以前乗っていたZ51は吸排気系にライトチューンが施されていてスペック上は505HPあったはずなんですけど、それと比べてもパワー不足は感じませんでした。C7のデビュー当時に乗った試乗車と比較しても明らかに今回の方がパワーがあるような気がします。まぁこの辺は数年前の記憶との比較なので正確なところは分かりませんが」

車両イメージ光岡自動車50周年記念モデル(特別仕様車)

次に乗っていただいたカマロについてはどうだったのだろう?

「カマロは5代目とはもう全然違いますね。現行モデルはボディを先代からシェイプして、デザインが随分とシャープになったというか、スッキリしましたが、運転してみると見た目以上に軽やかに感じます。パワーも現行モデルの方が圧倒的に上だし、兄貴分であるコルベットと比較しても大きく見劣りしない気がしますね」

「ちょっと前までは、僕ら競輪選手は愛車に自転車を積んで、全国各地のレース場まで移動していたのですが、もし今でもそうだったら、積載能力の違いでコルベットではなくカマロを選ぶ可能性が高いと思います」

最後に、今回、久々にアメ車に乗ってみて感じた、正直な感想を聞いてみた。

「やっぱりアメ車にはアメ車ならではの良さがありますよね。独特の存在感とかイージーな速さとか。僕はこれまでメルセデスベンツやポルシェといったドイツ製ハイパフォーマンスカーも所有したし、今はイタリア製のスーパーカーにも乗っていますが、それぞれに違った良さがあって、どっちが上とか下とかじゃないと改めて実感しました」

「一口にクルマ好きと言っても色々な人がいますよね。コレと決めた1台のクルマに乗り続ける人もいれば、僕のように割と短期間で色々なタイプのクルマに乗り換える人もいるし。僕はまだ20代だし、この先もっと歳をとっていけば考え方も変わるかもしれません。でも、少なくとも若い間は、これまで通り欲しいと感じたクルマは手に入れたいと思っています。僕の場合、新しいクルマに対する欲求がレースでのモチベーションにも繋がるので(笑)」

今回の取材後に行われた『第18回アジア競技大会』のトラック競技の男子スプリントに参戦した深谷選手は、決勝でリオ五輪銅メダリストで昨年の世界選手権金メダリストのアジズル・ハスニ・アウァン選手と対戦。惜しくも銀メダルとなった。

しかし、深谷選手はメディアの取材に対して「アワン選手との力の差はあまり感じません。勝敗は経験の差だと思います。今回は自分の成長を実感する大会になりました。競技を始めて1年でここまで来れるとは思っていませんでしたが、金メダルが取れる位置にあったのでやはり悔しい気持ちはあります。短距離種目のうちどの種目が向いているか、自分の特性はまだわからないので、今後、競技をやりながら、全ての底上げを図っていきたいと思います」と語ったという。

車両イメージ

日本競輪界の永遠の“怪童”、そして愛すべきクルマ馬鹿である深谷選手が、3年後の東京オリンピックで金メダルを獲得し、再びアメリカンスポーツカーを手にする事を期待したい。

車両イメージ

【プロフィール】

深谷知広(ふかや・ともひろ)

1990年1月3日、愛知県生まれ。169センチ、90キロ。競輪選手&トラックレーサー。競輪選手としては、史上最速・無敗でS級特進、史上最速でG1制覇を達成。トラック競技での直近成績は2018アジア選手権1kmTT優勝、2018ジャパントラックカップⅡスプリント3位。2018アジア競技大会スプリント2位。カーマニアの多い競輪選手の中でも、随一と言っても過言ではないほどの車好きとして知られる。

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