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BUBUがお届けする連載企画 “ナレッジ” | Showcase.42 「シボレーコルベット × まるも亜希子」

第42回目は第2回目以降の久々の登場となるモータージャーナリストの 「まるも 亜希子」さんにご登場いただきました。

BUBUがお届けする連載企画 “ナレッジ” | Showcase.42 「シボレーコルベット × まるも亜希子」

文/プロスタッフ写真/内藤 敬仁

ミッドシップでも右ハンドルでもコルベットはコルベット

アメリカンスポーツの新たな歴史が幕を開けた、あの日。ステージ上でヴェールが取り払われた瞬間、ミドシップレイアウトも右ハンドルも初めて見る姿だったというのに、まるでずっと昔からこうだったかのように、ドスンと胸のミットに収まったことに驚いた。

先代から受け継いだパーツはわずかに1つだというが、どこからどう見てもそれは最新のコルベットの姿だった。それ以外には思えない。いや、思わせない何かがあるのかもしれない。そんな予感が、実際にドライブしたらどんな結果になるのだろうかと思いながら、待つこと1年以上。ようやくステアリングを握る機会に恵まれた。

強く照りつける太陽の下で、待ち構えていたコルベットは初年度限定のイエローがひときわ輝きを放っていた。ノーズはシュッと矢のように伸びやかで、厚みを増したボディはグラマラス。リヤエンドにかけてマッチョに張り出したフェンダーと、新構築された伝統的なテールランプ。あの日見たままの惚れ惚れするようなスタイリングを目の前にして、気持ちが昂ぶらないわけがなかった。

車両イメージシボレーコルベット | C8

まさしく戦闘機のコクピットの様な一体感

試乗車は、エントリーグレードとなる2ドアクーペの「2LT」。外観上の「3LT」との差といえば、ホイールから覗くブレーキキャリパーがレッドではなくブラックペイントになることや、これまでの伝統にのっとってクーペに装着されている、着脱可能なルーフパネルがカーボン製ではなくボディカラー同色となること、リアスポイラーなどもカーボンではなくボディカラーで塗られていること。

レーシーな雰囲気は多少控えめかもしれないが、隣りに「3LT」を並べて比較しない限り、あまり大きな差はないように感じる。それほどまでに、ベースのデザインのインパクトが絶大だということだろう。

インテリアはまったくの初見だった。そそり立つ断崖絶壁のようなセンターコンソールパネルに圧倒されつつシートに収まれば、まるで自分がコルベットの一部に組み込まれたかのように、ぴたりと一体になる。少年の頃にトム・クルーズの映画『トップガン』に憧れた人なら、戦闘機パイロットになった気分に浸れるかもしれない。

これまで数多のスポーツカーが“ドライバーオリエンテッド”という言葉をコクピットに使ってきたが、そのほとんどが霞むほどの一体感。どのクルマにも似ていないインテリアに、すっかり惹き込まれて早く走り出したい衝動に駆られたのだった。

車両イメージまさしく戦闘機のコクピットのような一体感

最低限の便利さ?適度な不便さ?

この日は残暑厳しい外気温だったが、せっかくだからルーフパネルを外していこうということに。脱着そのものは簡単で、エンジン後方にあるリヤのトランクスペースに収納できるようになっているから、外したはいいが置き場に困ることはない。

ただし、外したルーフパネルは男性でも一人で持ち上げるのは重労働で、2人で左右を持って収納するのが理想的だ。

大きな荷物がなければ、リヤのトランクがルーフパネルで塞がってしまっても問題はない。フロントにもう1つ、深さのあるトランクが用意されており、2泊3日程度の旅行バッグくらいならラクに収納可能だ。

そのほか、2人分のリッド付きドリンクホルダーが備わり、シート後方の中央にはスマートフォンがすっぽり入り、ワーヤレスチャージができるスペースもある。ドアポケットもあるにはあるが、ちょっとタイト。この“最低限の便利さ”とも適度な不便さ”とも言える絶妙な塩梅が、走りへの期待感を高める効果があることをエンジニアは知っているにちがいない。

車両イメージルーフはリアトランクに格納

アメリカらしい人に優しいスポーツカー

そして待ちに待った試乗は、6.2L V8 OHV「LT2」エンジンの背後からの雄叫びとともにスタートした。アイドリングによる振動は小さめだが、今か今かとその時を待ち構えるエンジンの低い鼓動は全身を包むように響いてくる。

コルベット史上初となったGM自製の8速デュアルクラッチATで「D」をセレクトし、まずは幹線道路にソロソロと出ていく。ターボでは扱いにくいことの多い場面ではあるが、自然でなめらかな発進、低速での忍足のうまさに感心。そのまま流れにのって、市街地のストップ&ゴーを紳士的な身のこなしで快適に走っていく。

アクセルを踏んだのにタイムラグを感じてしまうような、DCT特有のヘンなクセがなく、40〜60km/hくらいでの加減速の繰り返しもまったくストレスがない。それどころか、快適性を保ちつつも路面の変化やギャップなどの情報は手のひらに伝えてくるし、アクセルワークの微妙なコントロールにも反応がいいから、だんだんとクルマとの対話が進み、お互いを理解しあえるような環境が整っていると感じられて嬉しくなる。

速く走らなくても、一般道の速度域でも楽しみ方が見つけられるのは、やはりアメリカが他民族の国であり、多文化の国であり、どんな人でも乗れてどんな道でもどんな速度でも快適に走れるよう、たとえスポーツカーであっても人に優しいことがマストである、そんなクルマ作りをモットーとするGMらしいところだろう。

ワクワクするような気持ち良さ&楽しさがある

視界がよく車両感覚がつかみやすいことにも感心した。もちろん最初は必要以上に緊張して、交差点を曲がる際にはイン側の巻き込みに気を使ったり、駐車する際にも車幅や左右のクリアランスを気にしたりしていたのだが、全幅が1940mmあるという物理的なところを飲み込めば、ミドシップのスポーツカーとしては別格の扱いやすさだと感じる。すぐに緊張はほどけ、コルベットと呼吸をともにするようにリラックスしている自分がいた。

しかしもちろん、快適で楽しいだけがコルベットじゃない。高速道路に入り、ここぞとばかりに右足を踏みつければ、目が覚めるようなパワーがあっという間に三桁へとデジタルメーターを跳ね上げる。ドッシリとリヤに荷重がかかり、後方から蹴り出されるように加速Gが全身をスカッとさせてくれる快感は、何度も何度も味わいたくなるほどだ。ただしフル加速でリヤがホイルスピンしそうになっていたような、先代までのスリルという点では、C8はやや薄まっているかもしれない。サーキットで全開にすればまた話は別だろうが、あくまで高速道路で感じた範囲では常に安心感があり、トリッキーな動きをしそうな気配すら顔を出さない。

それは高速コーナリングにおいても変わらず、直線からカーブのインに向けてステアリングを切り始め、再び直線へと戻るまでの一連の挙動が一筆書きのように見事なつながりを見せる。かといってそれがつまらない優等生的なものでもなく、実に“達筆”だと感じさせるところが魅力的だ。直線の気持ちよさとともに、こうしたカーブで「次はどんな文字が描けるだろう」とワクワクするような楽しさがあることは、大きな発見だった。

GMのエンジニアたちの悲願を達成したモデル

思えばミドシップのコルベットは、「コルベットの父」と呼ばれた伝説のエンジニア、ゾーラ・ダントフ氏がすでに最初から構想していたのだという。ゾーラ氏亡き後、仕事を引き継いだ歴代のエンジニアたちも、常にミドシップにトライしながら何らかの事情で実現できずにいたというのは、あまり知られていないエピソードだ。

そんな、エンジニアたちの悲願達成ともいえるC8は、外観のインパクトもインテリアもパワーも、まさしくスーパースポーツでありながら、人に優しく快適で、誰でもどこでも楽しめるアメリカらしい懐の深さも健在。1953年から連綿と守られてきたコルベットの魂が一気に躍動したようで、さらにコルベットが好きになったのだった。

車両イメージ

【プロフィール】

まるも 亜希子

カーライフ・ジャーナリスト。映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツ参戦や安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。女性パワーでクルマ社会を元気にする「ピンク・ホイール・プロジェクト」代表として、経済産業省との共同プロジェクトや東京モーターショーでのシンポジウム開催経験もある。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表。近年はYoutube「クルマ業界女子部チャンネル」等でゆるく楽しいカーライフ情報を発信中。

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BUBU MITSUOKAがお届けするスペシャルコンテンツです。
自動車に限らず、幅広い分野からジャーナリストや著名人をお招きして自動車を中心に様々な角度から
切り込んでいただく連載企画です。

今後も多数展開いたしますので、お楽しみに!毎月配信。

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