リペイント以外は全てオリジナルコンディション
まるで自動車工芸品、美しいデザインも健在
文/石山 英次写真/古閑 章郎
何度も触れているが、BUBUビンテージのコンセプトは「コンディション優良の個体を販売する」というもの。だからマスタングやカマロ、コルベット、チャージャーといったブランドに縛りはない。
くわえて、仕入れは直接日本人スタッフが現地に赴き状態を確認したものを買い付ける。それにより日本人の目で見た車両把握が可能になる。
もしくは現地の個人売買にて仕入れる場合、直接オーナーさんを見ることが可能にもなると、常にそうしたこだわりを貫いている。
今回取材した個体は1968年のマーキュリー クーガー。この車両、今から57年前の個体であるが、なんと本国ワンオーナーのミントコンディション。もちろん若干の手は入っているが、それでも他に比べて圧倒的に原型に近い個体。
さすがはアメリカ。自動車文化が根付いている国らしくこうした歴史的名車が現存されている。そしてそれを仕入れたBUBUビンテージ。もちろん、個体の価値のみならずクルマとしての状態の良さを確認したからこその仕入れである。
さて、マーキュリー クーガーであるが、1964年にデビューしたマスタングが爆発的人気を得たことによってフォードは次なる展開を考える。そして1967年に登場したのがマーキュリー クーガー。ベースは当時のマスタングである。
よってマスタングの姉妹車であり、マスタングをベースにした豪華版的存在であった。
だが、マスタングをそのまま使用したわけではなく、ボディ比で7インチ、そのうちホイールベースを3インチ延ばし、マーキュリーならではのラグジュアリーかつヨーロピアン的なデザインで包み込むことによってスポーティなマスタングに対する上級モデルという立ち位置でデビューした。
ちなみにマーキュリーとは、フォードとリンカーンの間に位置する中核ブランドであった。
マスタングとは異なり、マーキュリー クーガーは2ドアハードトップのみがリリースされ、マスタングよりも3インチ長いホイールベースによって全体的にエレガントな印象が増し、ロングノーズショートデッキスタイルがより一段と際立つ。とにかく、クーペスタイルが非常に美しい。
くわえて装備も豪華にされており、マスタングのスタンダードエンジンは直6だったが、クーガーはV8エンジンのみのラインナップ。またヘッドライトはグリルと統一されるバキューム作動で開閉するヒドゥンヘッドライトで、リアにはウィンカー作動時に内から外へと順番に光るシーケンシャルテールライトが採用されている。
搭載されるエンジンは5リッター(302cuin)V8で230hp、最大トルク295lb-ftを発生させる。それに3速ATが組み合わされる。
当時のトリムレベルであるが、ベースグレードとXR−7があり、XR−7はエクストラコストを払うことで叶うアップグレードモデル。主にインテリアに違いが存在する。
ウッドトリムのダッシュボード、ブラックフェイスのゲージ類、トグルスイッチ、オーバーヘッドコンソールetc。また、オートマチックトランスミッションにはTハンドルコンソールシフターが取り付けられた。
ということで再び取材個体であるが、個体は貴重な初期モデルのワンオーナー車。トリムレベルはXR−7ではなくベースグレードであるからブラックを基調としたシンプルなインテリア。
だが、全域において破損はなく当時の雰囲気を色濃く残す各種パーツや装備で埋め尽くされている。まさしくビンテージ。
具体的に、この車両は南カリフォルニア在住のオリジナルワンオーナーカーで、オリジナルカラーへの再塗装を1回行った以外は全てオリジナルコンディション。まさしく希少なサバイバーである。
これまで数台のマーキュリークーガーを取材した経験があるが、そのどれもがXR−7であったから、ベースグレードのシンプルイズベストな質感にも感心する。というか、とにかく現存する、使い込まれたいい塩梅の雰囲気に完全にヤラレてしまう。
またゴールドのボディカラーやホイール、そしてブラックのバイナルトップといった各種ボディ外観の状態が素晴らしい。それでいてインテリアに57年の歴史を感じさせるオリジナルの痕跡が見られるのだから、内外装ともに素晴らしい。この先、公道を走らせるのが勿体無い(ずっと飾っておきたい)と思わせるほどである。
くわえてマーキュリー クーガー自体のデザインがエレガントでたまらなく美しい。まるで自動車工芸品である。
もちろん、エンジンやミッションがスムーズに動くことは確認済みで、日本の公道でも走らせることは十分に可能なコンディションである。
ちなみに、もし同じような年代のマスタングがこのレベルを維持していたとしたら・・・・、おそらく今回の個体プライスで購入することは不可能だと思う。考えようによってこのクーガー、圧倒的にお買い得と言えるかもしれない。
この個体を手に入れた方は、どうか現状のレベルを維持しつつ末長く楽しんで欲しい。それだけの価値がある個体である。