フォード好きなら何としてでも味わいたい現代の名車 vol.1
2007年に復活した往年のシェルビーモデルはもはや入手不可能と思われるほどレアな個体
文/石山 英次写真/古閑 章郎
シェルビー GT500は現代版マッスルカーにおける名車中の名車である。特に復刻初期のモデルはもはや入手不可能と思われていたから、こうした優良個体を見ると驚くと同時に、いくつになっても金が貯まらない自分の不甲斐なさに腹が立つ。
シェルビー GT500は2007年にデビューし、毎年のように進化を続けていた。2009年当時までのGT500のマックスパワーは500hp、2010年型は540hpとなり、2011年型は550hpとなる。
さらに2013年では当時最強の662hpとなり、名実ともに最高パフォーマンスを発揮する当代一のマッスルカーとなった。最終モデルは2014年である。
シェルビー GT500の搭載エンジンは基本的には5.4リッターDOHC V8+イートン社製スーパーチャージャー(最後の二年間のみ5.8リッターになった)。
ツインカムユニットなのはフォード社内のSVT(スペシャル・ビークル・チーム)が深く関わっていたからであり、先々代マスタング コブラ(マイチェン前)から彼らはそれを続けていた。
そしてエンジンを組み上げた責任者のネームプレートをブロックに貼るのも、彼らの流儀である。
組み合わされるギアボックスは乗り手を選ぶ6速MTのみ。ゴルフボールのような白い球型シフトボールがノブに刺さっている。
もちろん、これは当時のチューニングマシンを再現したもので、フォードにおけるパフォーマンスマシンの代名詞とも言えるだろう。
そんなシェルビー GT500の2010年型、4万3,000kmのBCD認定中古車である。
かつては、上記の通り2010年以降毎年のように進化を続けていたから「一体いつのを買えば良いのか」と、迷った方も多いはず。
だがすでに絶版車となっていることもあり、欲しければ年式よりも個体の状態重視が鉄則だろう。とはいっても、「まともな個体はほとんど見つからない状態」というのがこのGT500なのだ。
で、この車両はBCDが直輸入しオーナーに収めた車両であり、乗り換えのため再び入庫したモデル。その間、BCDが直接アフター整備を行っていたこともあり、車両コンディションに精通した良好なモデル。
実際に各部を見回したが、驚くほどクリーンな個体であった。もちろん、レザーシートには距離相応の使用感はほんのわずかあったものの、外装等も含めれば決して14年前の個体には見えない。もちろん事故車でもない。
「かなり調子の良い個体です。過去に何度かGT500の中古車を販売していますが、ここまでの状態はありませんでした」とBCDスタッフ。
こうしたパフォーマンスモデルは、前オーナーの使い方によってコンディションのレベルがかなり変わる。この個体のユーザーさんは、ハードなカスタマイズを施すことなく純正状態で楽しまれており、かつBCDの定期検診を受けていたということもあって、走りの機能の部分(ミッション等)の調子が非常にいいと。
だから、これから購入した方も思う存分楽しむことが可能だろう。
ちなみに、この型のシェルビー GT500は当時から魅力的なアメリカンV8らしいレーシーなサウンドが特徴である。個人的にもエンジンサウンドに限って言えば、近年のモデルにおいてベストと断言できる。
それを6速MTで自ら操る行為こそ、このクルマに乗る最大の醍醐味であり、大金を払う根拠になる。
もちろんすでに10年以上前のモデルであるから、単なる速さで言えば現代の最新マシンには敵わない部分もあるだろう。だが、それをも飲み込んでしまうほど走らせた時の感動(フィール、サウンド等)レベルが高い。
当時から、この型のシェルビー GT500はアメリカンマッスルの象徴のような存在だった。しかもMT車のみで乗る人を選ぶのも素敵である。だが絶版車かつハイパワーMT車ということで、もう二度とお目にかかることはないだろうと諦めていたモデル。
まともな整備を受けずぐちゃぐちゃになっていたGT500を何台見てきたことか。
そんなシェルビー GT500の優良中古車、しかもBCD車両ベースとなれば紹介しないわけにはいかないだろう。
同じ値段を出せば、コルベットならC7が買えるかもしれない。もちろんC7も良いけれど、まだ数年先でも選べる個体はいくつかあるだろうと思う。だがシェルビー GT500ならパフォーマンスは互角だし、いざという時の4人乗り、しかもレア度で勝る。
繰り返すが、こんなレベルの個体、もう絶対に見つからないと思う。