Scale Garage

“Scale Garage” ジク ピアジオ アペ 50

文/S.Hiramatsu

イタリアと共に歩んだ小さな名車

車両イメージ

今回紹介するのは、「ジク ピアジオ アペ50」。長くイタリアで愛される可愛らしい3輪商用車が、手のひらに乗るミニカーになりました。

実車はどんな車?

イタリアのバイクメーカー、ピアジオの一人乗り小型3輪自動車「アペ」。イタリア語でミツバチを意味し、花から花へ蜜を忙しなく運ぶ働きバチのように、街の中を走り回る姿を表します。

アペが登場したのは1948年のことで、世界大戦後の復興期において安価で荷物が運べる働き手となる車が求められたことから誕生しました。ピアジオ社は当時、スクーター「ベスパ」を生産開始していました。スズメバチを意味するこのモデルのエンジンを用いて、後部に2輪と荷台を換装した実用的なクルマを実現。当時は運転免許が要らず誰もが使える手軽な乗り物として、多くの人々に寄り添いながら復興を支えました。そして経済が発展するにつれて、求められる需要の多様化に合わせバリエーションも拡張されていきます。その中でも今回紹介する50ccのモデルは最も手軽な一台として、あらゆるシーンで活躍を続けています。


そんなアペですが、2024年末をもってイタリア生産が終了してしまいました。ヨーロッパにおける厳しい環境規制や安全基準への適合が難しくなり、惜しまれながらも本場イタリアでの歴史に幕を下ろすことになたのです。けれど、まだまだ市場では現役で活躍しているし、何より多くの人を惹きつけてしまう魅力的な乗り物であることは言うまでもありません。

車両イメージ

これでアペの物語は一度途絶えたかと思いきや、意外な場所で、すでに次章が始まっていました。現在、インド現地法人の工場でEVモデルなどの生産が続いており、これがインドの交通社会の中で第2の全盛期を迎えているのです。インドといえば、世界最大のバイク市場。大量のバイクやオート3輪が道路にびっしりと走っている光景が目に浮かぶ方も多いかもしれません。ここでは「バイクに乗る」という趣味性よりも「安価に多くの荷物を運ぶ」ことが広く求められています。アペはまさにこの場所に必要とされているモビリティそのもの。場所が変わっても、必要とする人のもとにあり続けるアペの本質は変わりません。

戦後のイタリア復興を支え、経済を豊かにする基盤となり、そしてインドで第2の歩みを始めたアペ。これからも人々を思わず笑顔にしてしまうチャーミングな姿とともに、街を元気にする存在であり続けるはずです。

ちょっと特殊なクルマはジクの醍醐味

ドイツのミニカーブランド「ジク」(siku)は、なかなかミニカー化されてこなかった穴場的ポジションをちょうど刺して来るような、絶妙な車種選択も魅力だったりします。そしてそういった車種はみな、どうして今までミニカーが少なかったんだと疑問に思うくらい「ミニカー映え」しているのです。世界の誰もが憧れるスーパーカーなどは、もちろんミニカーになっても人気が出ます。でもその影に隠れている一風変わったクルマ達が、実はとても面白い形をしていたり、他の車種にはない役割を担っていたりすることがあります。ジクはそういったモデルにも焦点を当て、ユニークなミニカーとして私たちを楽しませてくれます。

「ピアジオ アペ 50」もまさにそんな一台。3輪のちょっとアンバランスなビジュアルや、絶妙に角が取られた緩やかな曲面などの効果で、四角いのになぜかコロンとした愛らしさを感じてしまいます。このかわいさはミニカー化しないのはもったいない!と思ってしまいました。ずっと手元に置いておきたくなるような、いい意味でおもちゃらしいミニカーです。

ミニカーを徹底解説!

このミニカーは造形の魅力はもちろん、ミニカーならではの質感表現においても非常に興味深いものがあります。実車が持つ「親しみやすい工業製品」らしさが如何にして手のひらサイズに落とし込まれているか、注目です!

メーカー

siku

ブランド

siku

発売年

2024

メーカー本拠地

ドイツ

製造国

中国

車両イメージ

フロントは前方一輪の特殊な構成が目を惹きます。一人乗りなので全幅はキュッと細くなり、相対的に背の高い印象も生まれています。はっきりとしたプレスラインが工業的な印象を生んでいますが、塗膜が厚いこともあってエッジが目立ちすぎず、実車で感じられた優しい印象に近付いているように感じます。

車両イメージ

サイドから見ると全長の短いシルエットで見るからに取り回しの良さそうな印象。シャーシ、ボディ、荷台というわかりやすい構成も特徴です。

車両イメージ

リアから見ると明らかにボディとは別体の「ハコ」が後付けされているのがわかります。実車はこの部分はもちろん金属プレス剛版なわけですが、ミニカーではプラ製になっています。そして興味深いのが、素材の違いだけでなく表面の質感まで変えていることです。

車両イメージ

ボディと荷台の表面を見比べてみてください。ボディに艶がある金属部分に対し、プラの荷台にはシボ加工(表面の極めて小さい凹凸、ざらざらした質感を生む)が施されています。これによりボディと荷台に質感の違いが生まれ、2つの要素が一目で別物として認識できます。一つの大きなボディでクルマが形作られるのではなく、「ボディに荷台を組み合わせた実用車」という構造が、ミニカーを見ただけで直感的に伝わってきます。さらにプレスラインにはわずかな曲面の面取りが施され、硬い「カド」がない点も実車に即しています。

車両イメージ

さらにリアハッチは開閉可能!先述のシボ加工により、触った感触がミニカーというより小物入れのようで、日用品的な優しいものになっています。アペが持つ小さくて便利で親しみやすい特性が、核心を突いたまま落とし込まれているように感じられました。思わずキャンディやアクセサリーを忍ばせたくなります。

車両イメージ

ディテールにも見どころがたくさん。レターロゴやエンブレムが非常に鮮明に入り、実車では樹脂の別パーツとなっているヘッドライト周りのユニットは艶消しブラックの塗装で表現されています。さらにフロントフェンダーにもシボ加工が施され、シンプルな形状だからこそ質感の丁寧な描写が印象的です。

車両イメージ

リアにはヒッチメンバーが装着され、別売りのトレーラー等と組み合わせて遊べます。テールライトはモールドで表現。ナンバープレートの文字は非常に繊細ですが、立体的なエンボスで表現されています。

車両イメージ

シャーシは3輪ならではのユニークなカタチ。ヨーロッパの安全基準適合の証であるCEマークとsikuのロゴも刻まれています。

車両イメージ

今回ご紹介したモデルは、イタリアで誕生したオート三輪「ピアジオ アペ 50」の工業的な魅力が凝縮された、見て触って楽しめるミニカーでした。そしてミニカーサイズに落とし込まれた質感表現の徹底により、かわいらしさの中にもドイツらしいものづくりへの敬意を感じることができます。

街を彩る小さな3輪車は、インテリアとしてもお部屋に遊び心をプラスしてくれそうです。これをお読みいただいた皆さんにも、ぜひ楽しんでいただきたいと思う素敵なミニカーです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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