文/S.Hiramatsu
今回ご紹介するのは、ホットウィール ’56 FORD TRUCK」。夏がよく似合う淡いブルーとシルバーで構成された車体には、アメリカンカスタムの魅力が凝縮されています。
ミニカーの名称としては「’56 FORD TRUCK」となっていますが、元になった実車は「F-100」という名前のトラックです。名前に含まれる「F」は1948年から続くフォードのトラックシリーズを表し、後に続く数字部分は積載能力を示しています。初代は「F-1」という名前でしたが、2代目から「F-100」の名がつきました。今回紹介するホットウィールは、この2代目モデルの荷台を箱型にしたパネルバン仕様です。
100(初代モデルの場合は1)は使用されている数字区分の中で最も小さく、1/2トン積みの軽量〜標準サイズ。なお、「F-150」が後継となり現在に至っています。
F-100の2世代目は、通称「パンプキン」と呼ばれ、アメリカを象徴する車の一つとして多くの人に愛されています。ボリュームたっぷりのボンネットやフェンダーの造形がまるでかぼちゃのようであることが由来となっています。
アメリカにおいてトラックは欠かせない存在であり、古くから生活の必需品、あるいは趣味を共にする相棒としてカーカルチャーを作り上げてきました。広大な土地の広がるこの国では、農作業や工業など、何をするにもそのスケールがとにかく大きく、荷物をたくさん積んでパワフルに走るトラックが重宝されました。仕事だけでなく、キャンプやサーフィンといった趣味など、あらゆるシーンで使い勝手の良さを発揮します。ちょっとくらい物をぶつけても大丈夫な寛容さも持ち合わせ、まさにアイデア次第で使い方は無限大。どんな時も生活を共にしてくれるトラックは人々の行動範囲を広げるとともに、アメリカの自由な精神性のもと、この土地に深く根付いていきました。
さて、今回ご紹介するのはアメ車好きなら一台は持っているであろうミニカー、ホットウィールです。ホットロッドスタイル(大排気量エンジンや派手なペイントを用いたカスタム文化)の過激なデザインで登場し世界中を魅了したこのブランドについては、もはや筆者がここで語るまでもないかもしれません。1968年にマテル社が生んだホットウィールは、その誕生から既に半世紀以上経ち、カスタム・カルチャーを象徴する存在として、世界中の車をモデルにあらゆるミニカーをリリースしています。
筆者が感じるホットウィールの一番すごいところは、一台一台がどこか「空気を纏っている」ように感じることです。巷に溢れる多くのミニカーは車そのものの面構成や光の移ろいの美しさを改めて感じられる魅力があり、一つの造形物としての所有感が強いのではないでしょうか。一方ホットウィールは、「こんな場所にいそうだな」という感覚が直感的に来るんです。だから手に取った一台を見た時に、その余白を私たちは想像することができます。古き良きアメリカの郊外、ネオン輝く夜のダイナー、木々が生い茂る密林、日本の古民家が並ぶ街並みまで・・・それぞれの場所にある、それぞれの車のカタチ。その姿を遊び心たっぷりに写し取るホットウィールは、実はあらゆるカルチャーと共にある投影図なのです。
ちなみにホットウィールにはファンの間で「謎車」と呼ばれている架空車も人気で、そちらも身近な物やカルチャーからインスピレーションを得た個性的な車両ばかり。熱狂的なコレクターも多く存在します。
メーカー
マテル
ブランド
ホットウィール
発売年
1999
メーカー本拠地
アメリカ
製造国
マレーシア
筆者のお気に入りポイント
エンジンフード開閉ギミック
いつものように前置きが長くなってしまいましたが、なんだかんだ言ってホットロッドスタイルのカッコ良さでホットウィールの名が知れ渡ったことに疑う余地はありません。今でこそあらゆるカーカルチャーを反映するホットウィールですが、なんでもホットロッドにしてしまう潔さは健在なのですから。今回紹介するのもそんな一台。アメリカの発展を共にしたF-100パネルバンにスーパーチャージャーを搭載し、ローライダー風の車高調も入ったアメリカンカスタムの魅力が凝縮されました。爽やかな淡いブルーのメタリックは、いかにも重そうなボディとは裏腹にとっても爽やか。海岸沿いを気持ちよく駆け抜ける姿を想像させます。
フロントはフェンダーとボンネットの2層構造の丸みある立体がモリモリになっています。さらにスーパーチャージャーがドンと突き出し、とにかく縦方向のボリューム感がすごい!丸めのライトは旧車特有の可愛らしさを持ち、ライトカバーとグリルガーニッシュの一体整形モジュールは実車ではメッキパーツ。細かい塗り分けこそないですが、パーツの存在感はしっかりと感じられます。
サイドビューではタイヤがホイールアーチの内側に入り込んでいるのがよくわかり、車体の重さを強調。ウインド後端から伸びる段差部分はピックアップトラック(荷台に屋根がないトラック)のシルエットを構成。共通車種でのバリエーション展開がなされた実車の特徴がしっかり反映されています。ドアハンドルも旧車ならではの造形になっており、細かいところまで当時の風を纏っています。
リアは大きな立体で、ズドンと貫く豪快さがあります。リアフェンダーは車体後端まで伸び、リアに迫力とスピード感を与えています。左右に開く観音開きのドアもアメリカのバンタイプの車両ではよく見られました。マフラーは左右2本出しとなっています。
荷室にあしらわれているのは、フォード純正パーツロゴと青色のフレイムス(炎のグラフィック)の組み合わせ。商用車両として多く使われたトラックと速さやスタイルを追求するホットロッドカスタムの融合というこのミニカーのテーマが反映されています。グラデーションを無数のドットパターンで表現する印刷技法にも注目です。
このモデルの最大のポイントはエンジンフードが開閉するところ!フェンダーまで一体になった大きな部品をガバッと開ける感覚で、アメリカンカスタムの大胆さを指先で感じることができます。実は同車種は近年もリリースされていますが、このギミックは廃止されており、入手困難なもの。そのため、内部構造を楽しめる本モデルは貴重なものとなっています。
底面も大胆なボリュームで機械部品が造形されています。太いパイプがマフラーまで走り、迫力あるアメリカンな雰囲気がここにも現れています。
今回は、大人気ミニカー「ホットウィール」より「’56 FORD TRUCK」を紹介いたしました。これぞアメリカン・カスタム!という出で立ちは、迫力満点でホットウィールらしい遊び心あふれる仕上がり。加えて、夏にぴったりな淡いブルーメタリックで、デスクの上を爽やかに飾ってくれる一台でした。
カーカルチャーを手のひらサイズに落とし込んだホットウィールは、ここでは語りきれない魅力がたくさん。これからも取り上げていきますので、ご一緒にお楽しみいただけますと幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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エンジンパーツを前から見ると、ベルトらしき構造体が確認できます。
現在のものより少し太さのある、当時のホットウィールロゴが刻まれています。