
文/S.Hiramatsu
今回紹介するのは、「マッチボックス キャデラック CT5-V」です。キャデラックが手がけた厳格な佇まいのセダン「CT5」の上品でありながらも大胆な魅力的な造形がぎゅっとまとまっています。
アメリカのプレミアムブランドであるキャデラックの4ドアセダン「CT5」は、伝統を継承しつつも先進感のあるデザインとFRレイアウトによるスポーティーかつ上質な走りが魅力です。
この車両のルーツとなるのが2003年に登場したミドルクラスセダン「CTS」。FRレイアウトのミドルサイズセダンとしてデビューしました。当時5mクラスの大きなサイズのセダンにもFFを採用していたキャデラックにとって、ミドルサイズセダンにFRレイアウトを採用することは大きな分岐点だったと言われています。新世代を予感させたCTSは、モデルチェンジを経てスポーツセダンとしての地位を確立していきました。そしてCT5の名がついた車が誕生したのは2020年。直線基調のデザインが特徴的だったCTSとは異なり、流麗なシルエットを描くクーペスタイルを持つ、洗練されたモデルとして誕生しました。これから紹介するミニカーはVシリーズというスポーツモデルです。
実車は伸びやかなクーペルックな出立ちで、フロントフェイスに縦型のライトが備わり車体の前面とサイド面を分断しています。左右の端が強調され、全幅感を増していますが、実はこの表現は横方向の動きを止めてしまうものでもあります。そのため実車の1,895mmという全幅があってこそ成り立つ表現手法だといえるでしょう。大きく構える堂々とした姿で、地面に対して切り立った大きな面としての存在感があります。これはある意味で建築的とさえいえる、唯一無二の個性です。車の走りを表現する際に用いられがちである動的な躍動感とは違う、キャデラック独自の美学が現れています。
マッチボックスは、1953年に英国のレズニーという会社から発売された長い歴史を持つブランドで、当初はその名の通りマッチ箱を模したパッケージに入っていました。当時は金属製のタイヤやシャーシを持ち重厚感こそあったものの、窓ガラスのパーツなどはない簡素なものだったようです。しかしボディのプロポーションや各種造形は実車に忠実なものでリアリティを感じられるものでした。年月が経つにつれ製造技術も向上する中で、1968年に最大のライバルが現れます。それが米国の「ホットウィール」でした。現在も世界No.1のシェアを誇るホットウィールは、マッチボックスの反対とも言えるアプローチで、派手なカスタムやペイントを施した刺激的なデザインでヒットし、マッチボックスの地位を脅かしました。マッチボックスはホットウィールの成功を傍目に、カスタム路線へ走ったものの業績は振るわず、レズニー社は経営破綻してしまいます。その後いくつかの会社の買収を経たのち、1997年にホットウィールの販売元であるマテル社の買収を受けることに。現在ではホットウィールと差別化されたリアル路線として、マテルが持つもう一つのミニカーブランドとなっています。
メーカー
マテル
ブランド
マッチボックス
発売年
2024年
メーカー本拠地
アメリカ
製造国
タイ
筆者のお気に入りポイント
実車さながらの立体感
マッチボックスでは、3.0LのV6ツインターボを搭載したスポーティーな高性能モデル「CT5-V」がモデル化されました。日本国内で発売されていないグレードで、お目にかかることの難しい車両です。そんな車両でも手元に置いておける手軽さは、ミニカーの大きな魅力ですね。
マッチボックスではダイナミックなスタンスでスポーツセダンらしさを表現。また、わずかな面の角度で大きく反射光の色が変化するメタリックカラーを採用し、影が落ちる面と光を拾う面の間で非常に綺麗なグラデーションが生まれています。
フロントの造形は深い掘り込みにメッシュパターンが立体的に再現された重厚感のあるものです。中心が真ん中で折れるような大胆なフロントの造形はキャデラックの伝統的なデザイン要素で、これをミニカーでも再現。ボディからはみ出すタイヤは少し誇張気味ですが、ミニカーならではのワイド表現の一つとなっています。さらにライトやエンブレムといった細かな部分は「タンポ印刷」と呼ばれる、判子押しのような技法の印刷表現。大胆な造形が魅力のキャデラックですが、ディテールを見ると繊細かつ洗練されたものへと進化を続けています。どんどん複雑になっている自動車のフロント周りのディテールに沿うように、ミニカーでもそれを再現するための技術が向上しているのですね。
サイドビューは非常に流麗なクーペライクなシルエットを描きます。小さなミニカー、かつシンプルな面構成でも強い立体感が感じられるのはメタリックの強いカラーリングによるもの。リフレクリョン(反射)も実車のように入っており、本物の美しさがそのまま手元にやってきたような感動があります。ピラーは窓と一体整形で透明なパーツ。ミニカーならではのビジュアルになっていますが、ウインドウ全体が前後方向の伸びやかさを強調する要素として機能しています。また、フロントとリアの末端は縦方向にぱつんと切られたような形状に。長い断ち面がボディの厚みをダイレクトに表現しています。
リアのルーフラインが綺麗に見えるこのビューでは、CTSから一歩進化したCT5ならではの魅力がダイレクトに伝わってきます。一方でフロントと同様、縦型のライトや中央での折れ形状など、流麗な姿を描きながらも面構成にはキャデラックらしさが色濃く継承されています。
立体的で大胆な構成が魅力のリアはフロントとの一貫性が強く、奥行きがしっかりとある造形が魅力。古くは1950年代の車両に見られた「テールフィン」という縦にそびえる鋭い翼のようなモチーフも、実はライト周りのディテールにずっと受け継がれ、新たな時代のモデルにも伝統の息遣いが宿ります。トランク末端が跳ね上がるようなダックテール形状、フェンダーの造形などがメタリックカラーと相まって、実際の起伏以上に深みを感じさせる立体表現です。さらに下部にはVシリーズならではのディフューザーも再現されており、これはスポーツモデルの空力に特化した造形。非常に細く繊細なライト内部や各種ロゴの印刷も、リア全体の充実感を高めます。
ボディが中央で絞られ、フェンダーに向かって大きなフレア面(上からの光を拾う面)が張り出していく様子を、メタリックカラーが実車のように魅せてくれます。
今回ご紹介したモデルは、キャデラックが手がけたFRミドルサイズセダンの魅力が、立体表現とカラーリングの相乗効果で凝縮された一台でした。一見シンプルなミニカーではありますが、実車のような光の移ろいを手元で楽しめるため、クルマ好きが眺めるおもちゃとして非常に魅力的なのではないでしょうか。また、筆者自身、記事のために撮影をする際に視点を下げて観察したことで改めて反射の綺麗さを認識することができました。最近のミニカーの造形には目を見張るものがあり、実車を見るような角度と目線を同じくすることでその魅力に気づくこともあるように思います。これをお読みいただいた皆さんにもぜひ、ミニカーと目線を揃える楽しさを味わっていただけましたら幸いです。予想以上に実車の魅力を捕まえたその形に、一層思い入れが深まるかもしれません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
BUBU MITSUOKAでは今回題材として取り上げたキャデラック「CT5」などのアメ車をはじめ、多彩な輸入車を取り扱っております。詳細はお気軽にお問い合わせください。
CT5-Vは国内未導入モデルのため、こちらはCT-5の在庫車の画像です。なお、お読みいただいている時期によっては売却済みとなっている可能性がございます。






