今回紹介するのは、「マジョレット プライムモデル シトロエン DS19」です。世界的に名を馳せ、もはや芸術品とも言われる名車がミニカーとして現代に甦りました。
実車は1955年にパリで開催されたオートサロンで華々しくお披露目されました。これまでにない流線型の宇宙船のようなデザインと独自のサスペンション機構「ハイドロニューマチックシステム」により、たちまちこの車は世間の注目の的となりました。ブースでの受注台数は15ヶ月分の予定台数に匹敵したといい、この車が人々を惹きつける特別な存在だったことがわかります。
シトロエンが開発した「ハイドロニューマチックシステム」とは、金属バネの代わりに高圧窒素ガスが封入された「スフィア」と呼ばれる球体のパーツがバネの役割を果たす、独自のサスペンション機構です。道路からの衝撃をガスが吸収するほか、オイルがスフィア内部のバルブを通過する際の抵抗で揺れを抑えることができました。ガスは圧縮される(縮むことのできる)スプリングとして機能し、、オイルは圧縮されず流れにくい「抵抗」となりダンパーとして機能しました。いわゆる油圧ダンパーとして働く重要な仕組みそのものが、スフィア内に盛り込まれていたのです。これにより極上の乗り心地が生まれ、その心地よさは魔法の絨毯のようだとも言われるほどです。さらに車高を任意に調節できる機構が搭載されていました。走る状況に合わせてまるで違う車に乗っているかのような乗り味を楽しむことができました。この思想を受け継いだ油圧システムは、現在のシトロエンの一部のモデルに継承されています。
シトロエンDSは、画期的な油圧システムのみならず、その圧倒的なビジュアルで多くの人々の目を釘付けにしました。当時社内デザイナーであったフラミニオ・ベルトーニが手がけた唯一無二のスタイルは、今見ても本当に新鮮に感じられます。まるで宇宙から来たような未来感を持つこの車の発表は、当時の人々にとって衝撃的な出来事だったのでしょう。
シトロエンの独創的かつ先進的なデザインの代名詞ともなったDSの名前は、現在シトロエンから派生した高級ブランドとして存在しており、いまだかつてないディテール処理を盛り込んだ非常に個性的な車たちを世に送り出しています。
今回ご紹介するのは、マジョレットというブランドのミニカーです。シトロエンと同じフランス生まれのミニカーブランド。日本ではカバヤ食品が食玩として取り扱っています。
このメーカーの歴史は古く、1967年に設立され、当時世界最大のミニカーメーカーと言われた英国のマッチボックス社と市場を取り合っていました。日本国内で投入されたのは1978年のことでした。
その後は大規模な広告展開で一気に事業を拡大したり、かたや一度破産宣言をしたり、いろいろな会社に買収されたりと、さながら時代に翻弄される1自動車メーカーのような、波瀾万丈な歴史を辿っています。
ミニカーブランドとしてあまり馴染みがないかもしれませんが、ちょっと変わった輸入車好きにはたまらないラインナップも多く、飾っておくだけで画になる素敵なモデルが揃います。今回ご紹介するのは、「プライムモデル」という、コレクター向けのシリーズのものです。
流線型のボディに優雅な尻下がりのシルエット、ボディと一体となりタイヤを覆うフェンダーなど、車の魅力が手のひらサイズに凝縮されています。フロントのドア上部には、フェンダーにおいて立体のピークとなる曲面がボディに馴染んでいくような非常に特殊な段差形状があります。実車だとここに景色の一部が湾曲して写り込み、色々な表情を見せる不思議なポイントです。ミニカーでも反射光がぐにゃっと一段曲がっているのがわかります。彩色もいい意味でシンプルなもので、ヨーロッパのおもちゃらしい、褪せないアイコニックな魅力がありますね。このミニカー自体はヴィンテージモデルではなく、2022年のモデルですが、当時の金型やミニカーとしての表現をあえてそのまま現代に持ってきたような不思議な魅力があります。ホイールもごくシンプルなもので、レトロな車体にぴったりですね。
斜め後ろからのビューはこのミニカーの醍醐味と言えるかもしれません。すべてのラインが収束されていくリアエンドには上品なディテールが立体的に表現されています。このミニカーではルーフがホワイトで一層目を惹きますが、実車はFRPで整形されていました。これは低重心化、軽量化のためであり、他にもボンネットやトランクにアルミを使うなどの工夫がされました。また、ルーフ後端の円錐形に飛び出した部分にはウインカーが搭載されているなど個性的な作りも随所に光ります。このミニカーでもルーフは樹脂製の別パーツとなっており、実車の特徴が強調されています。
さらに近づいてディテールを見てみます。グリルとバンパーは樹脂製の一体パーツで金属のボディと綺麗な嵌合を成しています。ヘッドライトはクリアパーツで、まんまるのライトがきらりと輝きます。さらにデフォルメされたフェンダーミラーがなんとも愛らしいですね。ちょこんと小さな手を上げているようなこの魅力は旧車にしかないものです。
リアエンドのディテールも目を見張るものがあります。バンパーは樹脂製のパーツで、その中に覗くライトはボディと一体整形のパーツが綺麗に塗り分けられたものです。これらが組み合わさることにより、旧車らしさが一段と出ています。昔の車は今と違って、限られた整形技術の中で作られたパーツがそれぞれの存在感を持って組み合わされた嵌合形状としての魅力が多くありました。立体そのものはシンプルですが、それぞれの部品が別体として認識でき、存在感があったのです。ミニカーにおいても、このようなパーツ分割により独立した部品の存在が立体的に現れ、これがレトロで魅力的な表現だと感じられます。
ミニカーは手に取って遊べることが何よりの魅力!この車両はドアを開閉できるギミックがあります。このほか、上から押すと沈み込むサスペンションも搭載されています。
中にはシートやダッシュボード、ステアリングの造形があります。実車の個性はインテリアまで抜かりなく、ステアリングを支えるスポーク(支柱)は一本のみ。そのままぐっと曲がり回転軸としてダッシュボードに刺さっています。このミニカーでもその造形が再現されています。実はミニカーにおいてステアリングは必ずしもこんなに丁寧に作られるとは限らず、お皿のような形状で中が抜けていないものも多いです。ただでさえ手のひらサイズの小さいミニカーでは、ハンドルとスポークを別物として造形するにはプラスチックを非常に細く整形しなければならず造形に限界が来てしまうのです。そんな事情もある中ですから、ハンドルが再現されているのはもちろん、1本スポークという特殊な造形がこのサイズに反映されているのは本当に凄いことだと感じます。ドアを開けて造形をしっかり確かめられるのも嬉しいポイントです。
裏側から見ると、前後で大きくトレッドが違うのがひと目でわかります。すぼんだ形状のボディで、さらに内側に入り込んだ特徴的なタイヤには、溝のパターンもしっかり掘られています。地面に接地する部分はわずかに平面が設けられており、溝形状が地面に引っ掛かることなくシャーッと気持ちよく走ります。シャーシ中心付近にある2本の金属棒のようなものは、車軸の上に交差するように伸びており、板バネの役割を果たしています。サスペンションをギミックとして再現するための重要な部品です。シャーシにはタイ製であることや1/59のスケール表記、EU域内での安全基準を満たした証であるCEマーク等が確認できます。
今回紹介したミニカーは、独創的なプロポーションはもちろん、複雑な反射光を生むボディ形状、各部品の存在感に忠実なパーツ構成、斬新な構成のステアリングなど、実車の特徴的なポイントが手のひらサイズに盛り込まれた非常に魅力的なモデルでした。こうして手に取りながら実車の魅力に触れられるのはミニカーの素晴らしいところですね。筆者自身、この記事を書くにあたって改めて注意深く見ていったことで、「え、ここまで再現されていたの!?」と驚いたポイントがいくつもありました。
これを読んでくださった皆さんのお気に入りコレクションにも、、まだ気づいていなかった新しい推しポイントができるかもしれません。この記事をきっかけにご自身のミニカーや所有するお車をじっくりと眺めていただけましたら幸いです。
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