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今回紹介するのは「トミカ No.F14 AMCペーサー」です。1977年に発売されたこの車両、もうすぐ発売から50年が経とうとしています。
トミカにはかつて外国車シリーズというものがあり、それらの製品番号の前には「F」がついていました。Foreign=外国、の意味だそうです。その中に多くラインナップされていたアメ車の中でも、ひときわマニアックであり愛すべき車両がこの車です。
ミニカーになると可愛らしいデザインが目を惹きますが、実車は全幅1900mm以上と超ワイド。コンパクトな部類でありながらも幅広い、「ワイドスモールカー」なる独自のカテゴリを生み出しました。エンジンは直列6気筒で、排気量は3.8L、オプションモデルで4.2Lでした。馬力は100PS程度と、現代の感覚からすると排気量の割には控えめな印象もありますが、排ガス規制のかかっていた当時の環境下では十分に標準的な馬力性能でした。
実車が一躍有名になったのはピクサー映画「カーズ2」の影響ではないでしょうか。悪役でしたが(笑)。同メーカーのグレムリンをはじめ、世間から排除された珍車・欠陥車が集い世界を舞台に悪事を働く絵面は滑稽でしたが、人間社会を投影しているような気もします。筆者もペーサーの存在をこの映画で知り、のちにトミカの存在も知りました。
AMCはアメリカン・モーターズ・コーポレーションの略で、当時としては斬新なモデルを多く発表していた夢のある会社でした。そんなAMCですが、80年代には倒産に追い込まれ、当時所有していたJEEPブランドがクライスラーへ渡り、AMCの名前は消滅してしまいました。
AMCを倒産の危機に陥れる大きな引き金となってしまったのが、このペーサーでした。10年先の未来を見据えて作られたというこの車は、大きなリアガラスが特徴的な他、ドアの大きさが左右非対称であるなど、とにかく革新的なモデルで話題を呼びました。しかしガラスエリアの重さで燃費が悪く、共用部品がほとんどないのでコストもかかる、といった原因により、AMC社は衰退していったのです。
この残念なエピソードを持つ、かつての未来カー「AMCペーサー」は、むしろ現代において一部の人々からカルト的な人気を誇る車両となっています。曲線で構成された車体に大きなガラスエリア、なのにディテールはしっかりヴィンテージカーといういで立ちは、まさに「昔の人が考えた未来」。今見ても斬新なその姿の中に、どこか哀愁を感じてしまうのです。
フロントは目の大きさが強調された愛くるしい顔つき。四角く縁取られた造形の中に丸目がきらり。とってもかわいいこのお顔が大好きです。
当時のトミカのすごいところは、最低限の彩色で車を再現する、「造形全振り」な作りをしているところ。
ナンバー内の「AMC」やグリル上の「Pacer」の文字ですら、印刷ではなく立体的な造形で起こされています。ウインカー、ヘッドライト、グリルを一体のパーツで整形、さらに彩色はメッキ単色。この少ないパーツ点数と色から、車の重厚感やパーツの接地感がしっかりと伝わってくるんです。これで50年近く前の金型だなんて、当時の成形技術はすごいものです。
サイドのプロポーションも素晴らしく、当時特有のサイドモールもしっかり表現されています。ウインドウも曲面のボディに合わせてしっかり嵌っています。ペーサーは造形が特に特徴的なモデルなので、、シンプルなカラーリングに対しスタイリングの個性が一際強く映えています。
昔のトミカはボディ色こそシンプルですが、ウインドウの色が個性的でした。金型の技術をフル活用したリアルな造形の中に、おもちゃらしい華やかさが加わります。ペーサーには薄緑色のウインドウが嵌っています。黄色に薄緑、可愛らしい丸い車体と相まって、筆者は春を連想してしまいました。
リアは特に唯一無二の個性あふれるスタイルです。フロントは当時よくあった顔の系統ともいえますが、このリア形状を持つ車は世界中探してもペーサーしかありません。この広大なガラスエリアから、当時の人々はどんな景色を見ていたのでしょうか。ミニカー片手に、そんなふうに思いを馳せるのもまた一興かもしれません。
また、このように斜めの角度から見ると、タイヤがホイールアーチに対して内側に入っているのがわかります。ディテールが簡素化されたトミカだからこそ、こういった構成的な要素が「レトロ」を感じさせるのです。
リアウインドウ周りをアップで。トランクがかなり内側に来ているので、サイド面全体がリアへ張ってきている印象もあります。この角度から実車を見られることは滅多にありませんから、ミニカーを所有する価値をこんなところに感じてしまいます。また、ホイールアーチへのアプローチ面はごく僅かで、ボディ全体が張り出しているのがわかります。ボディがなんだかずんぐりして見えるのは、通常分けられがちなフェンダーとボディの境界がほとんどないためでもあります。
昔はシャーシも金属製でした。そのため、持った時の重みがすごい。筆者は金属製シャーシの時代をほとんど知らないので、子供の頃も「下が銀色のトミカは古い」と思っていた記憶があります。
後ろにはカシメ(前に見られる、ネジの代わりに金属を変形させ留めるもの)ではなく突起形状を利用したはめ込み式になっています。ボディからシャーシまで貫通する大きな柱を立てる必要がなくなるので、特徴的な造形がある際にはこの手法が取られます。この車では大きなガラスエリアとそこから覗けるインテリアが特に重要であるため、しっかり再現するための工夫があったのですね。
今回ご紹介したモデルは、レトロトミカの魅力を凝縮したような本当に魅力的なミニカーだと思います。造形の巧みさ、シンプルかつ個性的なカラーリング、そしてずっしりとした重厚感。
変わった車が好きな筆者としては、ミニカーという手に持って遊べる立体物としてペーサーが残っているということに感動しています。これからもこのミニカーを、愛すべきアメ車の軌跡として大切にしていきたいと思っています。
BUBU MITSUOKAでは、アメ車をはじめ多彩な在庫車を取り揃えております。各店舗の在庫の詳細はお気軽にお問い合わせください。
最後までお読みいただきありがとうございました!

ワイドスモールカーという前衛的なアプローチが面白いですね。
大きな曲面のグラスエリアを備えることから、「金魚鉢」という愛称で親しまれました。



