文/S.Hiramatsu
ピックアップチョイスとしてご紹介するのは、「2023年モデル ランドローバー ディフェンダー 110 イースナー ダーク エディション 4WD」。 ランドローバーの5ドア・ロングホイールベース仕様「110」の日本限定特別仕様だ。その希少性もさることながら、ランドローバーの美しいボディ形状とマットカラーの組み合わせが非常に魅力的な一台だ。
ランドローバーといえば、引き算の美学とも言える徹底的な機能美によって体現された端正な佇まいが思い起こされる。この背景には戦後の時代背景が深く関わっている。第二次世界大戦後間もない物資不足の中、ディフェンダーの原点である「シリーズI」では鋼材に代わって航空機用の軽量で錆びにくいアルミ合金を用いたボディを採用。これは「ビアマライト」という素材であり、 海水に使ってもなお、ほとんど錆びない材質だといわれる。資源不足が生んだ名材は現在こそすでに生産終了となっているものの、今に続くランドローバーの揺るがない礎。ブランドにおいて良い意味で「堅さ」をもたらした源であることには間違いないだろう。
そしてオフローダーとしての魅力を高めるその「堅さ」こそがスタイリングでも明確に表現され、大きな面の張りと抑揚のバランスが、剛性感(車が外からの力で変形しなさそうであること)を見た目にも体現している。その思想は現在にも受け継がれ、合理的かつ耐性のある機能美を纏う存在として、路上でも一際目を引く存在である。
このように素材そのものの強さとそれを最大限に魅せていくデザインが一貫したランドローバー。その代表格こそ「ディフェンダー」だ。先述の「シリーズI」から進化を続けた正統後継にあたるモデル名として1990年に冠された。それ故、ディフェンダーは「丈夫でどこへでも行ける本格四輪駆動車」という文脈以上に、それまで積み上げてきたランドローバーの歴史そのものを示している。
そして今回紹介する「イースナー ダークエディション」は少し変わっている。イギリスのブランドであるにも関わらず、日本限定130台(紹介のボディカラーの場合)で製造というきわめて特例的なモデル。その希少性はもとより、ボディの美しさを浮かび上がらせるマットカラーが一層この車のしなやかな堅さを伝えてくれるようだ。
「イースナー」はイギリスの地名であり、その複雑な地形はランドローバーのテスト走行に使われている。どんな地でも走り抜けられる車両としての在り方は、海を越えた日本にこそ伝わるものがあるのだろう。そんな特別仕様「イースナー」の第2弾として、よりダークでビターなテイストにまとめ上げられたのが、この個体「ダークエディション」である。最大の魅力は、黒の表情の移り変わりを車体全体で見ることができること。
全長4,945mm × 全幅1,995mm × 全高1,970 mmの車体が秘める細やかな変化づけに、ランドローバーらしさをひしひしと感じられる。
正面で目に留まるのはランドローバー伝統の丸目を現在に再解釈したリング状のユニット。完全な円形状だと生物的に見えすぎて先進感やプロダクトらしい硬質感が生まれにくいところ、上部を直線的に切ることで一気に、睨みつけるような精悍な顔つきになっている。その奥に発光ユニットを置くことで、初代からあったような「目」の印象もしっかりと継承。
この角度では車体全体のボリューム構成を堪能することができる。そして特徴的な艶消しの質感は、サントリーニ・ブラックメタリックにサテンプロテクティブフィルムを重ねたものである。つまり、粒子の輝きに敢えて遮光フィルムを重ねたようなものだ。この物理的な厚みは車に一層の奥行きを生んでおり、車体全体が大きな塊に見えてくる。写り込んだ色も淡いグラデーションを描いており、面の大きな動きを捉えている。
サイドビューはディフェンダーの大きな魅力の一つ。お手本のような(と言ったら烏滸がましいかもしれない)クロカン車のプロポーションで、どっしりとした姿勢を感じられる。
さらに下回りとボディでは異なる素材感。これによりSUVらしい足回りの統一感・無骨さが一層際立っている。さらにフロントドア前の通気孔は縁取りだけが艶ありのブラックで、ワンポイントのファッション性と部品としての素材感による一段上の上質さが演出されている。ウインドウもブラックアウトされたカラーブレイクの一部として機能し、その後部に配置されたマットブラックのパネルがまたひとつ、部品として組み込まれた魅力を秘める。
リアは「黒の表情」が凝縮された見応えあるビジュアルだ。サイドからつながる下回りとボディの質感の違いはもちろん、ウインドウと一体化されたピラーにも注目したい。本来ピラーはガラスのみで作れないので、どちらかといえばボディ側に属する部分だ。しかしこうしてウインドウと一体に見えるような艶ありの処理ということは、水平方向のつながりをきれいに通すための明確な「意図」によるものであると読み解ける。さらにライトの埋めこまれるユニットにも艶ありのブラックが使われ、ウインドウからの繋がりを生む。
そしてボディ造形において重要な処理がなされていることもお話しておきたい。このように垂直にストンと切落としたような造形では、その形状が断面のように見えることで、中身がたっぷりと詰まった非常に分厚い塊のように感じられる。
さらにそこまで続くショルダーやルーフの水平基調のラインがかえって強調され、脳が無意識にその「先」の存在を補完する。その結果、見かけより全長が長く見え、車の迫力が増して感じられるというわけだ。
ホイールは艶ありで、足元に異なる素材感を与える。「DEFENDER」のレター刻印も工業的で、いかにもクロカン車といった処理である。
徹底的にブラックでまとまったエクステリアに対し、インテリアではホワイトの差し色がコントラストを生み、メリハリある空間に。暗く沈みがちな車内に適度な抜け感が加わり、風通しのよい空気感だ。
ステアリングは先進的かつクリーンな印象。それでいて多角形で構成された無骨なフレームのような形状のがっしりとした質感も感じられる。手で握る部分は丸くシンプルで運転しやすい形状なのもグッド。
上を見上げるとサンルーフがあり、室内を自然な光が照らす。ダークエディションというだけあって、やはり夜空が似合うだろうか。
リアシートを倒すと1900L以上のトランク容量が生まれる。高さがあるうえ、荷室のフロアマットやシート裏には水はけのよいパターン加工がされ、汚れを気にせず使うことができる。アウトドアシーンがぐっと快適になりそうだ。
今回ご紹介したモデルは、一見真っ黒な車体だが、非常に多彩な表情を秘めた一台であった。
大げさなことはせず、端正ある造形の中で織りなされる豊かな黒の表情は、引き算の美学を貫くランドローバーだからこそ。ダークかつ上品なコーディネートは、あなたが訪れるあらゆる場所を決して暗い記憶にせずとも、ただ静かに引き締める。
この車両は、BUBU MITSUOKA 柏ショールームで取り扱っております。詳細はお気軽にお問い合わせください。






