文/S.Hiramatsu
ピックアップチョイスとしてご紹介するのは「2018年モデル ポルシェ 718 ケイマン」。ポルシェらしく美しいボディスタイルはそのままに、ミッドシップタイプのレイアウトとなった1台。ボディカラーはナイトブルーメタリック。
全長4,385mm×全幅1,800mm×全高1,295mm。排気量2L、水平対向4気筒エンジンを搭載。最高出力は330PS、最高時速275km/h。ミッションはフロア6MTとなっている。車両重量は1,360kgで、軽量であることが大きな特徴。
同時ラインナップとして7速PDK(ポルシェ・ドッペルクップルング)もあるが、こちらはデュアルクラッチを用いたシームレスな加速ができ、手軽さの中にしっかりとした変速感がある。そしてマニュアルモードでの臨場感あるドライビングが特徴だ。それに対し、今回紹介するモデルは6速の完全なマニュアル車。スポーツカーにもATのみがラインナップされることも多い現代では、MTモデルの価値を一層感じられる。クラッチペダルがあるのがやはり7速PDKとの大きな違いで、足元と手元の絶妙なセッションで走りを生み出すような体験はMTならでは。コンパクトで扱いやすい車格と相まって、圧倒的な操作感に浸れるモデルといえるだろう。
ケイマンの名を冠したモデルがデビューしたのは、2005年。当時はボクスター(オープンモデル)と同車格のクーペモデルとして登場。ポルシェというブランドの長い歴史の中で新たな選択肢となったケイマンは、多くの人々に支持され現在も進化を続けている。
ポルシェといえば伝統のRRレイアウトだが、ミッドシップになることで、車重バランスがとりやすく、車格もコンパクトになり、エントリーモデルに最適。長年の美学を受け継ぎブランドのフラッグシップモデルとしての地位が確立された911と比べ、軽く乗りこなせる相棒のような存在となっている。
フロントフェイスは、伝統的なポルシェの顔つきを色濃く残している。サイドウインドウ下のショルダーから続くラインが前方へ流れていき、ボンネットへとつながる。そこに一段、キレのあるエッジが精鋭感を与えている。ライト形状も911の丸型と異なり緩急のあるもので、内部構造もコントラストが映えている。全体の構成自体は伝統を残しながらも、ディテールには先進感も宿っている。
さらにボンネットのパーティング(パーツ間の分割線)の美しさも光る。車体の流れを分断してしまうようなパーティングは車のデザインにおいて処理の難しいところ。この車ではフロントにエンジンを積んでいないことでライト間にグリルがなく、無理のないパーティングを設けることができる。顔の中心を主張なく示し、さらに現代的な精密感を与える非常に洗練されたパーティングが通っていることで、無駄なく美しいフェイスとなっている。この工夫はポルシェの多くのモデルで見ることができる。
サイドは伸びやかで優雅なポルシェのスタイルを少し中心に寄せたようなスタイル。荷重が真ん中に寄るミッドシップレイアウトの特徴がそのままスタイリングにも現れている。コンパクトながらボリュームや面の美しさはポルシェらしく健在。
注目いただきたいのはインテークのあしらい。ミッドシップはスポーツカーの象徴のようなもので、それに伴い追加されるインテークもまた、走りに特化したイメージを付加価値に昇華する重要なアイテム。多くのスポーツカーで、インテークに向かう面を大胆にえぐらせたり、ボディと別立体でフェンダーのボリュームとして張り出させたりと、主張の強い演出がなされている。しかしケイマンは、水平基調の上品なラインが走り、インテーク形状で綺麗に収束させている。しかも、この一連の動きの上にドアハンドルやドア下部のパーティングが配置され、インテークとドア末端の描くカーブ(アール感)の関係性まで美しい。水平基調の流れを崩さず、ボディとの調和を大切にしているように読み取れるのが非常にポルシェらしく、洗練されたあしらいだ。
シンプルな美しさを体現したようなポルシェというブランド価値を背負ったエントリーモデルであることを踏まえてみると、より一層この形状に意味を感じる。
誰が見てもポルシェだとわかるリアビュー。リアに向かう伸びやかなルーフラインはケイマンでもしっかり体現されている。フェンダーのボリューム感は力強くも優雅。リアオーバーハングが短い分、リア回りのボリュームは911と比べて少しマッシブな印象で、コンパクトかつ軽快なイメージと合っている。また、フロントにあったようなエッジ処理は、フェンダーとトランクの境目に見られる。ボディのソリッドな形状と有機的なフェンダーを切り分けつつ、完全な別立体とはしない絶妙なデザイン。
ホイールは5本スポークのシンプルなもの。リムにはしっかりと奥行きがあって強い立体が感じられる。ディスクは切削されたような質感高い仕上がり。キャリパーはブラック塗装にシルバーのビス形状、ホワイトのレター。モノクロで締まった足回りが、鮮やかなブルーの車体をしっかり支える。
エクステリアを楽しんだ後は、インテリアを見てみよう・・・とその前に、紹介したいアイテムが!それはこの車のキー。握りやすいシンプルな形だが、これはどう見てもポルシェ。中央にボーンが通り、フェンダーが張り出し、伸びやかなルーフラインがあって、、車の魅力的な「美しいかたち」が凝縮されている。ポルシェはこのような車型のキーを展開しており、車のフォルムに対する熱量を感じ取ることができる。そして何より、こんなカタチのアイテムで車が走り出すことにワクワクする!複雑な三次曲面を持つ形状だが、キーホールにこのまま挿して回すタイプ。アナログな操作感はそのままだ。
インテリアはブラックとシルバーでかなり機械感がある。過度な派手さはなく、エントリーモデルとして必要十分な機能がしっかり備わっているという印象。そんな中で、エアコンのダクトは横や上面にも開口があったり、キーホール等の回して使う部品にはリング形状が囲っていたりと、機能や動きを意匠に昇華する方向でデザインが見られる。装飾ではなく、機能を強調したメカらしさに心くすぐられる方も多いのではないか。
ステアリングは骨格のような構造体が表に出てきたような質感。研がれたような面質や角感がスパルタンな印象だ。レザー部分は本革巻き。左右をよく見ると、レザーで覆われている部分にもエッジのような形状がある。この窪み形状は手がハンドルに馴染むよう役立つが、ここの角感も絶妙で、手を置いた際のフィット感はもちろん、視覚的な工夫も見られる。まるでシルバーの構造体が左右へ伸びているところに、上からレザーを張ったような質感になっている。無骨な骨格の硬さと、手に馴染むレザーの張り感。二つの素材を同時に印象付けるデザインとしても重要な要素だ。
リアシートのある911に比べ、2人乗りのこの車、インテリアは非常にコンパクト。シンプルながらもスポーツカーらしい運転席にはパワーシート標準装備。そしてすぐ後ろには、2L水平対向4気筒エンジンが。911よりエンジンが体に近く、後ろから突き動かされるというよりは、もはや動力と一体になる感覚。人と動力源が真ん中にぎゅっと収束されたレイアウトは、俊敏で軽快な若々しい走りを魅せる。
トランク兼エンジンフードを開けると、エンジンはカバーされており、すぐにアクセスすることは困難。整備性は少し劣るが、そこは専門店にお任せを。私たちBUBUでは整備・点検をお気軽にご相談いただけます。ちなみに表に出ているダイヤル部からはオイルと冷却水を入れることができ、日常的に扱える箇所。トランク容積は275L。
もう一つのトランクであるフロントのエリア。運転席に近い部分にはエアコン/ヒーターやブレーキ、ワイパー、バッテリー等が搭載されている。本来エンジンがあるような部分だけ綺麗に空いているようなイメージだ。とはいえ、911に比べたら重量配分に苦しんでいないこの車、過剰に機能部品を前方で集める必要はなく、比較的トランク容積を確保している。
前方トランクの容積は約150Lで、前後合わせると容積は400Lを超える。スポーツカーでこんなに容量が広いトランクを持つ車は珍しい。ただトランクが2箇所に分断されているうえ、リアトランクの半分以上はエンジンのある出っ張りの上になるので、積めるものに制約があることは留意する必要がある。しかし、この車は言うまでもなく走るための車だ。ポルシェのコンパクトスポーツカーにふさわしい俊敏かつ軽快な走りに、荷物の積める利便性も備わっているのだから、魅力的であることは確かだろう。
ポルシェの長い歴史の中で新たに投じられたミッドシップのコンパクトスポーツカーは、走りに必要なものをぎゅっと凝縮し、軽快に駆け出すエントリーモデルとして、魅力的な選択肢を与えてくれている。気軽かつ俊敏な若々しい走りで心躍るひとときを楽しんでみては。あなた自身も身軽になれる、素敵なドライブになるはずだ。
この車両はBUBU MITSUOKAさいたまショールームで取り扱っております。詳しくはお気軽に店頭へお問い合わせください。










