基本はオリジナル重視で機関系を強化
389エンジンは5速MTで優雅にもスポーティにも
文/石山 英次写真/古閑 章郎
60年代のポンティアックはスポーティなイメージをアピールしていたが、その商品企画の責任者であったのがジョン・デロリアン。後に映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場するデロリアンの生みの親である。
ポンティアック グランプリの「グランプリ」はF1グランプリのグランプリであり、「GTO」や「ル・マン」もモータースポーツに関連する車名を使いイメージアップを図っていた。
そんなグランプリは1962年にデビューする。デビュー当時はまだ丸目2灯の横目デザインで、正直、パッとした販売成績は残せていない。だが翌1963年にスタックド・ライト=通称タテ目を採用し、これが大当たり。
このイメージが60年代ポンティアックのイメージを方向づけることになる=後にGMが手掛けた傑出デザインの一台と評される。
また、専用のルーフラインが与えられ、シャープで直線的なラインとコンケイブド形状(逆反り式)のリアウインドウを特徴としている。
だが、1965年には2代目に進化し、さらなるデザインの変化をもたらした。よりシャープなものとなったのだ。よって、ポンティアック グランプリを語るとき、多くのファンが望むのが初代の63年&64年。特に64年型のフロントフェイスに憧れる方は多い。
で、64年型のグランプリであるが、全長5メートルを超える2ドアスペシャリティクーペ。これだけを見ても分かるインパクトの強いデザイン。スクエアな二分割グリルやボディサイドラインには、ほんのりだが50年代的デザインの名残を感じ、インパネメーター類を見るとその確証を得る。針が横に流れる横長のスピードメーターがその証である。
だが、リアルウッドを配したインテリアや一部にスケルトン樹脂を採用したステアリングホイールに、当時の高級スペシャリティクーペとしてのプライドを感じる。
ちなみに、1964年といえば、ポンティアック GTOがデビューしており、非常にデザインが酷似しているが、GTOはインターミディエイトであるから、グランプリを一回り小さく作った感じと言えるだろう。
ということで、取材個体。BUBUビンテージが輸入した64年型グランプリ。この個体はオリジナルストック状態をキープしつつ、各部を強化した個体。搭載エンジンは389キュービックインチ=6.4リッターV8エンジンで、2バレル×3連キャブレターのトライパワーを装備し360hpを発生させる。
ミッションはTremec製TKX5速MTに換装されている。同時にインパネには各種メーター類が後付けされており、エンジンルームにおいては熱対策が十分に施されているから、V8トライパワーを思う存分味わえる。
一転ホイールには、通称8ラグと称されたホイールがセットされストック状態を物語る。くわえてボディ外装の各部コンディションは非常にいい。室内にはシートのヤレ等若干の使用感を残すが、外装に関してはかなりのレベルである。
BUBUスタッフいわく「ポンティアックのタテ目デザインの人気は日本でも高いですし、弊社はル・マン等を扱ってきた経緯からずっと狙っていた個体でした。特に64年型のデザインはアメリカ本国で人気が高く、またいじられた個体が多く、今回のようなストック状態を維持している個体はなかなか見つけることができません」
ポンティアックといえば、上記のGTOといったマッスルマッスルした個体に人気が集中するかもしれないが、それらを適価で入手することは今や不可能である。だからあえてブランドの中心を狙わず、それでも分かる人には分かる逸品を輸入するのがBUBUビンテージ。
特に、一時代を築いたグランプリはフルサイズの最高級ラグジュアリークーペであり、「高級」ポンティアックの長い歴史の中でポンティアック史上最もパワフルなエンジンを標準装備し、そしてGMが60年代に手掛けた傑出デザインの一台だけに、乗ればマッスルカーとはひと味違う往年のアメリカが体感できるはずである。