第三世代のノバをセンス良く楽しむなら
ボディ内外装エンジン足回りなど機関的にも充実
文/石山 英次写真/古閑 章郎
50年代以前のパッセンジャーカーはフルサイズが一般的であったが、60年代になるとメーカーバリエーションとしてコンパクトサイズのモデルたちが登場する。
まず先陣を切ったのがフォードで、60年にファルコンを発表。それに追随したのが62年に登場したシボレー シェビーIIだった。その最上級モデルに400ノバというモデルがあり、後にその「ノバ」が単独で使用されるようになる。
62年に登場の第一世代の後、66年から67年が第二世代、68年から74年が第三世代となり、この第三世代からシェビーIIというネーミングを返上しシボレー ノバへと変化する。
67年にはシボレー カマロがデビューし、翌年登場の第三世代のノバにはそのカマロのフロントサスペンションが与えられる等、トータルパフォーマンスの向上が見られた第三世代であった。
取材車は、そんな第三世代にあたる71年型のノバである。この個体はBUBUビンテージが輸入した個体で、71年型だからいわゆるオイルショック以前の最後のパフォーマンス世代と言われる年式。
ノバの第三世代は1968年から1974年で、前世代から続く「SS」や396キュービックインチV8が搭載される等、ハイパフォーマンスモデルが存在しており、現在に至る人気の的もそうしたパフォーマンス系であることに間違いない。
で、今回BUBUビンテージが輸入した71年型は、そうしたパフォーマンスモデルへと各部がカスタマイズされており、また直前まで前オーナーさんが積極的に走らせていた個体というだけあって、カッコや雰囲気だけではない、パフォーマンスの高さも伺える個体となっている。
サンダルウッドと呼ばれるボディカラーにブラックのラリーストライプの組み合わせ。それらは驚くほどキレイな状態に仕上げられ、ルーフのバイナルトップも張り替え、各部に貼られるクロームパーツもピカピカに輝いている。当然、現地でレストア的整備の手が加えられており、旧車を感じさせるヤレはほとんどない。
ドア下がりも皆無で、ボンネットフードもスムーズに開閉可能だからボディのヨレを全く感じないのは驚きである。
搭載されるエンジンは5.7リッターV8。オリジナルエンジンではなく、換装されたクレートモーターの350エンジンで、水周りやラジエーターを含む熱対策、点火系、排気系チューンが施され、調子は万全。組み合わされるミッションは3速フロアATである。
BUBUスタッフいわく「日本の道路事情においても全く普通に走り、かなり速いです」というから素晴らしい。ちなみにマフラーはマグナフローで、快音を響かせる。
インテリアも、エクステリア同様、状態の良いオリジナルパーツに追加メーターやB&Mシフターといったカスタマイズが施され、パフォーマンスモデルに通じる雰囲気が感じられる。その一方で、ベンチシートというのがなんともアメリカ的である。
また、メーター周りやステアリングはオリジナル状態を保っており旧車らしさを感じる部分も多々あるから、チューニングマシンというほどでの荒々しいカスタム車では全くない。
というか、ボディを含めたデザインが抜群にいい。フロントオーバーハングが極端に短く、一転リアのオーバーハングがかなり長い2ドアクーペ。それにキュートな丸目ヘッドライトが組み合わされた絶妙なスタイル。
アメリカらしい荒々しさや強さというよりは品を感じさせるデザインだからこそ、走り系カスタマイズを施してもやり過ぎなければセンスの良さやオシャレな印象を与えてくれる。
今回の個体も、すべてが絶妙な雰囲気にまとまっていてセンスの良さがうかがえる。
個人的にはマッスルマッスルしているノバよりも、品良くまとまっているこの個体の塩梅が適度でちょうど良いと思っているし、とにかく全体的な質の良さに目が奪われる。
この型のノバに興味を持っている方なら誰もが納得するであろう個体ではないか。何より、すぐにでも日本の公道を走ることが可能なほど機関的に充実しているのがオススメポイントである。
ちなみに、以前と同様に今回の個体も狙って買い付けを行ったものではない。現地に直接赴き、コンディションや価格やカスタマイズ内容等を見計らった上での(仕入れ担当が状態を見て納得した上での)仕入れ個体であるから、再びノバが入荷する保証は全くない。
そもそも、現地で仕入れる旧車のコンディションも一台一台まるっきり異なるために、どんな個体と出会えるか、も現地へ行ってみないとわからない。
そういう中での仕入れであるから、ノバの入荷が続く予定はないし、逆に「欲しいから探して」と依頼しても見つかるかどうかも不明である。要するに仕入れも一期一会ということである。
70年代のアメ車らしい丸目ヘッドライトのキュートなフロントマスク、軽快に走らせる5.7リッターV8エンジン、そして旧車好きを満足させる内外装のコンディションに各部の仕上げ。
「ボロいノバを買って今回取材したレベルまで日本で仕上げようと思えば、一体いくらかかるだろう? またどのくらいの日数がかかるだろう? 」
今回の取材車両は、そんなことを考えさせるほどレベルの高い個体であった。